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Bad Summer Day Blues

「感情を高ぶらせてペン先から煙を出すためにはそれなりの覚悟ってヤツが必要だ」

2016年読んでよかったし人に勧めたくなった本7選

雑記

和田です。

今年はしっかり本を読む時間が少なかったのですが、まとめてみようと思いました。

最初に

  • 2016年に読んでよかった本から、オススメしたい本をまとめました
  • 備忘録みたいな感じです
  • 出版年はバラバラ、オール独断です

 

2016年読んでよかった本

岸政彦『断片的なものの社会学』(2015)

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

 Double Clapperzのsintaにオススメされて読んだ本。本当に有難う。

社会学的分析のために行われたインタビューや、個人的な体験のうちから、解釈を拒むシンプルで突拍子もない体験について綴り、それを愛おしく可愛がり続けるようなエッセイ集。今年はこういう「割り切れないもの」について書かれた言葉をたくさん気にしてきたような気がする。

これについては単独で記事を書いてます。

 

mwxn92.hatenablog.jp

この本を最初に読んだ時、自分は今いる「普通」の場所から、そこから外れた「彼岸」へと渡っていくことは本当に出来るんだろうか、そんなことをしたりオススメしたりすることが本当に良いことなのだろうか…ということを考えていました。

今はまた少し考え方が変わってきていて、自分の環境は半分くらいが普通であっても、常に割り切れない断片的な現象について触れ続けているのだから、飛び越えるとか越えないとかそういう問題ではないんじゃないか、というふうなことを思っています。

内容もさることながら、解釈できないものを不用意に追いかけすぎないように十分に配慮する岸政彦氏の文体も非常に優しく、美しいです。何かを表現したりしている人にはとても刺さる内容なのではないでしょうか。

高橋源一郎『丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2』(2016)

 

これもごく個人的な体験と合わせて記事を書きました。 

mwxn92.hatenablog.jp

世の中の色々な事件や出来事を通じて、様々な目線からの引用、言葉の解釈を重ねていくことで、物事を考えるとはどういうことか、民主主義とはどういうことなのかを深く探っていくエッセイ集。

この新書からは、「より良い世の中」にはなって欲しいが、「完璧な世の中」を諦めているというか、「あっちこっち行きながらバランスをとる世間」というものに「丘の上のバカ」というイメージを重ねて愛している節がところどころに顕れていて、その感じがどうにも迂遠に思えて受け付けられない人も多くいそうだなと思う。ただ、この本を通して読んで、アマチュアであることの大切さ(というより、アマチュアであっても物事を考えることの大切さ、その意味)を思い出すことが出来ました。

高橋源一郎ゴーストバスターズ 冒険小説』(1997)

ゴーストバスターズ 冒険小説 (講談社文芸文庫)

ゴーストバスターズ 冒険小説 (講談社文芸文庫)

 

今年は個人的に源ちゃんイヤー(星野源ではなく)でした。

ゴーストバスターズ 冒険小説』は、小説について極めて精錬かつ大胆に考えた世界レベルの脱物語、反・「反小説」といった感じの本。

この物語を通じて一体何をやりたいのか、とか、この物語の上で撃退される(はずだった?出来ていない?)ゴーストとは一体何だったのか? についてはWebでも色々な議論が為されていて、それは「物語」ではないのか、「近代小説」という枠組みではないのか、など色々な意見がありとても面白いです。それを読んでちょっとわかった気にはなるけれど、結局僕もよく分かっていないし、源ちゃん自身も全部を理解したわけではないのだろうと思う。

で、この本については、本編だけではなく、講談社文芸文庫、及びKindle版のそれについてくる「著者から読者へ」もまた非常に素晴らしい文章であり、これもまた何か創作の分野に携わる人は、是非とも心に留めておくべきものだと思います。(本当はこの「著者から読者へ」だけを読んでもいいのかもしれないけれど、流石に本編を読まないと意味がわからないのかも…)。

一つだけ。ゴーストに追いつかれた人間は、誰にも想像がつかないような恐ろしい目に遭います。しかし具体的な「どういう目」に合うのかは全く分からない。そこで、ゴーストとは「言葉に出来ない世における現象全て」なのではないか…となんとなく思います。そして、あるタイプの創作者にとって(世にあるもの、現象、理解できない深遠な物…等からインスパイアを受け、それを表現しようとする人たち)、そういう意味では全てのアウトプットは「ゴーストバスターズ」に行き着くのではないか、と。かつて、源ちゃんは「全世界を書きたい」と言っていた(『虹の彼方に』講談社文芸文庫版「著者から読者へ」参照のこと)し、この考え方もあながち間違いではないのかもしれない。

そういった源ちゃんの姿勢そのものからインスピレーションを受け、僕も今作品を作っているその只中です。

高橋源一郎銀河鉄道の彼方に』(2013)

銀河鉄道の彼方に

銀河鉄道の彼方に

 

そういう意味では、これもまた「ゴーストバスターズ」なのかも(笑)。ただ、これは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を土台に敷いているので、まだ分かりやすいです(僕は逆にちゃんと『銀河鉄道の夜』を読んでいなかったけど、それでもちゃんと面白かった)。

前半では様々な思考実験や、ちょっと身が震えるような「世界の果て」を見せつけられますが、中盤以降は「ゴーストバスターズ」的に銀河鉄道の様々な旅を追体験させられ、いつまで続くんだろう…と思った所で小説の限界が来て終了。という感じです。

ゴーストバスターズ』と比較して、小説、文学としての面白さ、スケールのデカさによる感動は『銀河鉄道の彼方に』の方に軍配が上がるのですが、やっぱり手段として明け透けな『ゴーストバスターズ』はそれによって考えをめちゃくちゃ想起させられるというのがあり、総合してどっちか?みたいなのはわからないかも…。最初にオススメするとしたらこっちだけど、そもそも一見さんは『さようなら、ギャングたち』で慣らさないとまずついていけないかもしれないし…で、本当に紹介するのが難しいですね。

ともあれ、手当たり次第100冊読むより『銀河鉄道の彼方に』を読むほうが数倍食らうだろうというのは間違いないです。是非。

ブレネー・ブラウン『本当の勇気は「弱さ」を認めること』(2013, 原著は2012)

本当の勇気は「弱さ」を認めること

本当の勇気は「弱さ」を認めること

 

「恥」について研究するブレネー・ブラウンによる著作。彼女自身が負けん気で完璧主義体質だったのだけれど、ソーシャルワークへの研究を続けていくにつれ、キーワードとなっていったのが彼女自身が忌み嫌う「恥」の重要さであった…という話。

恥ずかしいことでも果敢に立ち向かえ、傷ついたらちゃんとケアして立ち上がれ…という風にまとめて書くとかなり強い自己啓発書という感じなのですが(そして実際そういう節があるんだけれど)、特に面白いな、と思ったのは「脳は負の感情だけを消すことは出来ない」という話で、自分の感情を如何にケアするか? ということを考えた時にこの事実を指針にすることは多いです。(あと、「ふとした幸せな瞬間に、この幸せが全部失われてしまったらどうしよう? ということが脳裏に浮かぶ現象はよくあることだ」、ということが書かれていたりします)

実際本当に疲れている時に読むと辛くなりそうな箇所もあるにはあるけれど、彼女が実際にセラピーに通い始める冒頭の部分など、人間らしい部分もしっかり表現しようとしている感じがあるので精神論の話よりは遥かに読みやすいかと思います。

鴻上尚史『孤独と不安のレッスン』 (2011)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

 

『本当の勇気は「弱さ」を認めること』が完璧主義で強張った身体を的確に治そうとする「処方薬」だとするならば、『孤独と不安のレッスン』は「肩の力を抜いていいんだよ」とゆっくりとほぐしてくれる「マッサージ」かも。

常に人とつながってないといけない、伝えないといけない、という陥りがちな強迫観念を「ニセモノの孤独」として定義し、どうせなら、孤独になった上で自分の身体と対話する「本物の孤独」を目指しましょうよ、ということが冒頭に書いてあり、なんでもTwitterFacebookなどに報告せずにはいられない自分を少し反省したりしました(そして結局、そのことをブログに書いている…)。

演劇者らしく、身体にアプローチした「解きほぐす方法」も色々書かれていて、「何か辛くなったら、丹田の部分に力を入れて呼吸をする」という手段は僕も使うようになりました。

割り切れない社会を生きていくために、焦らず自分を見つめてやっていきましょう、という気持ちにさせてくれた本でした。

杉田隆史『正しく悩む技術: 「なんとなく……つらい」あなたを救うヒント』(2011)

正しく悩む技術: 「なんとなく……つらい」あなたを救うヒント

正しく悩む技術: 「なんとなく……つらい」あなたを救うヒント

 

 辛い時、個人的に一番救われた本かもしれない。

自身も仕事を転々とし、心理セラピストという職業をオススメされるまで自分の居場所が判らなかった筆者の言葉は、非常に優しく、合理的に「自分の問題をどう分割していくか」について教えてくれます。

サブタイトル通り、「なんか生きづらいんだけどどうしてかな…」「別に大変なわけじゃないけど、何か楽しくないな…」とかそういう時に読むと、大体ちょっと気分が晴れます。僕の生き方、考え方みたいなところもこの本にかなり影響受けたかも。

また、この人のやっている個人ブログも非常に良いので(この本よりそっちをオススメしたいくらい…)、ダラダラと読んでみるといいと思います。著者名で検索をば。

まとめ、来年の抱負

余力があれば今年良かった音楽作品についてもまとめます。